230422_全てを持っているあの子と何も持っていない僕③

かめたのコツコツ発達日記

いいなー、と思っている子が、その子の方から毎晩電話をくれる。

そんなにか嬉しいことはそうないはずだと思う。
だけれども、僕は電話をもらう度に、気持ちも落としていた。

電話は、嬉しくて、楽しくて、
だけれども、その子の話す「日常」の「当たり前」の話には、
僕が物心ついた頃から憧れ続けていた人や事、物に溢れていて、
そしてその話し方は決して自慢げではなかったところに、
それらがその子にとっては本当に、「当たり前」のものであったんだ、ということをつよく感じた。

その子は、本当に人が好きで、人に好かれていた。
優しくて、人のことも考え、実際に行動しているその子が、
人に好かれていることにはなんの疑問も抱かないし、
嫉妬のしようすら、そこにはなかった。

その日、僕は、もう会うのをやめよう、
その話をするつもりだった。
あまりに釣り合わないし、僕と会うことのその子のメリットが見当たらずに、
申し訳なさでいっぱいになっていたから。

僕は僕で、勝手にもう限界だった。

電話をくれた時、僕はいきなり話をはじめた。

「実はさ、僕メンヘラなんだよね。」
そう切り出してすぐ、
「うん。知ってるよ?」
そう返ってきて面を食らう。

「ああうん、そうだよね。それでさ、この間さ、話した結婚とかについて、僕も真剣に考えたんだ。結婚はさ、子どもを育てることを見据えてするものだと考えていて、それに今の僕の仕事は間に合ってない、そう言ったじゃない?」

「うん、そう聞いたよ。」

「それでさ、それだけじゃなくてさ、僕は、仕事もできていなくて、稼げてもいなくて、ロクに友だちもいなくて、遊ぶということもよく分からない。話すのも上手くない。何もなくて、僕から見たら、魅力的な人と僕が関わっていることそのものがおかしくて、そんな僕が結婚なんて、到底間に合ってないいないと思う。結婚を前提としていないと付き合えない、そう聞いているけど、僕は自分には到底間に合わせられないような魅力的な人と僕が結婚するなんて考えられないし、
結婚を考えているフリをして付き合うこともできない。
だから、会うのはちゃんと自分からやめないと、
そう思っている。」
長々と、そう伝えた。

そしたら、なぜかとても笑っていた。
一般的には深刻なムードになるような話をしたつもりだったから、また面をくらった。

「なんかややこしくしてしまったみたいだから、
それじゃあ友だちってことでいいんじゃない?
前にさ、私の生活と自分の生活を比べてしまう、
そう言ったけれどさ、
まあ、そもそも私はやりたい仕事をやっているならそれでいいと思うし、
それは私にはできないことだからすごいなー、と思ってる。
私自身は生活費に困ってないから相手にお金を求めているわけでもないし、
気にすることなんて何もないとは思うんだけど、
結婚ということが気になって比べてしまうなら、
友だちってことでいいんじゃないかな?
それであれば会うのをやめるとか、しなくてもよくなるんじゃない?」

そう言われて僕は、なるほどそうなると問題はないな。
そう、間の抜けた調子で思い、そのまんま
「うーん、確かにまあそうか。」とそう返した。

その話の後は他愛のない話をした。
その子の会社での話を聞いた。
気になったところは質問をして、たまには調子をずらして冗談を言い、笑った。

結婚するとか、付き合うとか、
もう考えなくていいのか、
そう思うと荷が降りた感覚とともに、なぜだかモヤモヤな感覚も覚えた。
そして、そのモヤモヤがなんなのかはよく分からないまま、ひとまず眠ることにした。

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