僕は、今の職場が3社目。
今までの会社では、
作業がうまくできないことや、同僚や先輩と打ち解けられない、
そのことが連なり、辞めてきてしまっている。
今の職場でも、数字の打ち間違えやメールの送り間違えが多く、
飲み会の席でも無口な僕は、
もっとしっかり注意しないといけないよ、
もっと積極的に関わっていこうとしないといけないよ、
と日々注意を受け、またここでも働き続けられないのではないか、
そんな不安がどんどんと大きくなる毎日だった。
僕は自分で自分の感情を掴みづらいところがあるけれど、
感情が顔に出づらいところがあるから、
毎日不安そうな顔をしている僕を見て心配させたり不安にさせたりしていた、
そのことをつよく感じ取り、不安をどんどんと大きくしていた。
そんな僕をみて、心配をしてくれたのがアニキ先輩だった。
アニキ先輩は、何度教えてもらっても忘れてしまう僕に、
しっかりしろよー、と言いつつも教え続けてくれているつよくて優しい先輩。
デザインの技術的な知識も豊富で仕事を堅実にこなしつつ、
飲み会や遊びの際にはしっかりとふざけることのできる、
あ、本当に余裕のあるカッコいい男の人って余裕も生まれるから自然と優しくなれるのだろうな、とそう思えるような、そういう風になれたらいいな、とそう思えるような人。
そのアニキ先輩に、僕は僕の仕事のできなさについて、相談の時間をもらうことにした。
「先輩、明日、仕事の後にすこしでいいので飲みに行く時間をいただけませんか。」
「うん、いいよ。明日な、分かった。」
そうアニキ先輩言った。
どうして?とはその場で聞かなかった先輩は、
僕が仕事のことで相談したいんだ、そう感じてくれていたんだと思う。
そして翌日、仕事終わりの時間に、
先輩の作業をしている姿をチラチラ見ながら、いつ頃がいいのかなー、
と考えながら、
いや、あんまり早くに仕事を終えるのもよくないよな、
とモジモジしながら、声をかけられず、どうしようかと考えていたら
「そろそろ行く?」と声をかけてくれて
「はい、お願いします」と答えた。
先輩とは帰りの電車で途中駅までは一緒だから、
あの駅で飲むか、この駅で飲むか、
どんなものが食べたいー?
そう聞いてくれたけど、僕は相談をするぞ、ということでもう頭がいっぱいで、
「先輩のおすすめのところに行きたいです」という回答だけをようやく絞り出した。
このお店はこういうお店なんだ、こういうのが食べたかったらあのお店がいいのかもしれない、
先輩はそう提案もしてくれたけど、鬱々としていた僕はその話もうまく即座に理解をすることができず、気づいたら居酒屋の中にいた。
相談を持ちかけたのは僕だから、僕の方から、
実はこんなことを思っていて~、と話をしたかったけれど、
社内で緘黙を発揮していた僕は自分から話しだすこともできず、
先輩も僕が自然と話し出すのを待ってくれているのだろうけど、
なに飲む?なに食べたい?とそう尋ねてくれる。
ああ、後輩なのに先輩に自分から何かを言うわけでもなく、
受動的な姿勢でまたいてしまったな、と落ち込み、
ただでさえ話せない状態だったのに余計に話しだせなくなっていた。
30分以上時間が経ち、先輩に時間をもらったのに何も言わないわけにはいかない、
そう思った僕は、もうその手前の話の脈絡も考えずに、勢いをつけて先輩に話はじめた。
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